蟲たち

昼、洗濯物を干していると、ジジッジジッと言いながら蝉がふらふら窓に向かって飛んできた。部屋に入られては大変と慌てて窓を閉めると、窓にバシッと当たって、そのまま干しているタオルに着地した。窓から数センチ、見ていても飛んで行く気配がない。こうなっては窓も開けられず、残りの洗濯物も干せない。

鳴きもせず、もさもさとタオルの上をゆっくり歩いていき休んでいる様子。


仕様がないので、食事を摂り、しばらくして見てもまんじりともしていない。

このままではどうしようもないので、窓を少し開けて、隙間からハタキの柄を差し出しタオルを揺らす、と、慌てたように干しているタオルの間を柔らかくぶつかりながら空へと飛んで行った。

安住の地を見つけたと思っていたのかしら。少し悪いことをしたな、とも思う。



昼過ぎ、休日の日課のベンチでの読書。またも気づかれない間に蚊にかまれる。いつも同じ場所をかまれる。左足のくるぶしが真っ赤に腫れ上がる。

ふと目を上げると、目の前の駐車場をトンボが一匹、ぐるぐる回って飛んでいる。飛ぶことがある単純に楽しい、といった感じである。何周も、何周も、ぐるぐる、ぐるぐる。まるで走り回っている子どもみたいだ。

また本を読み始める。一篇読み終わり、また目を上げると、今度は気持ちが大きくなったか、トンボは駐車場をはみ出すぐらいの円を描いて飛んでいる。

ぐるぐる、ぐるぐる。大きく何度か回って、やがて屋根の向こう、青空に向かって飛んでいった。


貴女に、走り回る楽しさ、動き回れる楽しさがあれば、今も私の目の前に居ましたか?

生まれ変わりとか、あちらの世界があるかは私には分からないけれど、もしあるのであれば、苦しむことなく、自由に野山を駆け回り、空を飛び回って居て欲しい。

この世のしがらみに悩まされることなく、好きな時に、好きな場所へ。