秋空の下

休みの日。身体はそこまで怠くない。仕事が駄目なのか、単にゆっくり寝たのが良かったのか。


風が涼しい。日差しも少し柔らかくなって、ジリジリとは肌をやかない。もうすぐ秋。一日、一日は長く、振り返れば長いのだけれど、やはり一年は早い。時間の過ぎるのが遅ければ辛いけれど、早いと思うのもまた悲しい。

貴女と過ごした日々が、どんどんどん離れていく。一日経てば、貴女は一日離れる。一秒毎に貴女は離れていく。悲しい。



今日は外で本を読んでいる時に、足にこそばゆいものを感じて見ると、小さなクモがスネを這い上がってきていた。手で払う。

また本を読んでいるとまたこそばゆくなる。見ると同じクモが同じ場所に這っていた。なんだか愛おしくなって手に移そうと指を近づけると今度は自ら砂利に飛び跳ねていった。


這い上がってどうしようというのかな。私の身体のどこを目指していたのか。ぽっかり空いた心の穴に巣でもかけようというのかしら。

けれどそこには冷たい風が吹くばかりで餌のひとつも迷い込まない。穴を塞いでくれやうとしているのならありがたいけれど。



そういえば、涼しくなって虫の数も減ってきた。ベンチを這うアリはいつもより少なくて、蚊も一匹しかいなかった。

私の血を吸う蚊。それを見ていて、この蚊の母親はもしかしたら貴女の血を吸った蚊かもしれないな、と思う。貴女の血を栄養としてこの世に産まれた蚊が、次は私の血を栄養として子を産もうとしている。この蚊の子々孫々の体の中で、貴女と私は一つに混じり合い、飛び、吸い、潰されながら、また次の世代へと繋がっていく。その考えは少しだけ私を愉快にした。



嗚呼、腹が減った。一人で食べる食事は味気ない。空腹感を抑えるためだけの摂食。味気ない。