帰っておいで

楽になる、とまでは言わないけれど少しお給料も上がったよ。


前の職場の、低かった給料、忙しかった仕事。無職で荒れていた一年。時間に余裕ができた今の仕事。けど、数年経って、ここ一年は忙しくて帰りも遅かった。

今は定時で上がれてる。


今なら、一緒の時間をいっぱい過ごして、今までよりかは少し贅沢して暮らせるよ。


大変な時期に支えてくれて、一緒に過ごして、笑って、泣いて、怒って、また笑って。

短すぎる貴女の人生の中、この七年で、幸せを感じてくれたかしら。生きてて良かった、って思う瞬間はどれくらいあったのだろう。

◯◯ちゃん、貴女は私と過ごして幸福やったんかい? そうであって欲しいけど、聞かずに終わってしまった、この生活。


今住んでる家も、二人で決めた。一日、不動産屋と一緒に回って、二人で決めた。住民票の移動も二人で。二人ともが世帯主。この家は貴女の家なんよ。◯◯ちゃんの家、というと、子どもみたいに笑ってたね。昔、両親が家に帰らない日もあった貴女。ちゃんと帰ってくるよ、毎日帰るよ、というと喜ぶ貴女。終電寝過ごして終点まで行っちゃっても

「帰ってきてよぉ」

と言われてタクシー代1万をかけて、ちゃんと帰ってきたやん。せやのに、なんで貴女は帰ってこないん? 帰ってきてよ、ねぇ。交通費なんて、なんぼかかっても払うから。


出掛ける時に、バイバイ、て言うと

「バイバイ、嫌!」

と言われ、行ってきます、と何度も言い換えた。せやのになんで貴女は、バイバイも言わずバイバイしちゃうん。

せめてバイバイ言うてよ。そしたら俺も バイバイ嫌やで て言うから。絶対イヤやて、貴女を止めるから。



言われるのが嫌やったから、バイバイ言わんかったんかい? 少しわがままが過ぎるよ、◯◯ちゃん。俺にも嫌がる権利を与えてよ。


怒ってないから、帰っておいでや。

ほら、雨が降ってきた。

どこまでも迎えに行くで。


いま、◯◯ちゃんはどこにおるん?