くしゃみ

くしゃみが止まらない。埃のせいか、寒さのせいか、誰か噂をしているのか。風邪という選択肢だけは除いておきたい。


昨日は外泊した。元々予定していたことだけれど、今日は本来仕事だったけれど、先日大遅刻した本来休みだった火曜日と交換して休みにしてもらっていた。今日から神保町の神田古本まつりだったから。朝一番から即売展に行きたかったから。神保町のビデオボックスで安く泊まった。薄い毛布一枚きりだったから、くしゃみでも出たら体調でも壊したかしらと不安になる。


昨日の夜は、貴女の行きつけだった、家の片付けにも来てくれた人が店長のバーに行った。貴女の遺灰が入った小瓶を鞄に忍ばせて。店長さんは一杯目、貴女が誕生日だったからシャンパンを開けてくれた。店長さん、スタッフの方と乾杯。貴女の誕生したことを祝うんだから、献杯ではないのだ。

そこで、隣の席にいた女性と色々話して、とても楽しく時を過ごした。以前店に来た時は貴女のことを想い、想い、涙が溢れそうになったぐらいだったけれど。人と話していると気が紛れるし、何より楽しい。人と交わるのは決して好きではないし、一人の方が落ち着くのだけれど、結局私は人が好きなんだろうなぁ、と思う。その分析が正しいのかどうか知らないけれど。


今日は本をいっぱい買えて満足した。去年、ここで落語の雑誌の束を見つけて、笑点が好きだった貴女に買って帰ろうか悩んで結局買わなかったことを思い出す。ほんの少し前までは、何を見ても、どんな場所に居ても、貴女が喜びそうなことに考えを巡らせて、貴女への お土産 を買っていたのに。貴女はよく帰って来た私に「お土産は?」と聞いていた。どんなものであれ、土産があれば喜んでくれる。無ければ「おみゃーげ…」ととてもがっかりする。どちらも可愛らしかったけれど、やっぱり喜ぶ姿を見たくて何かしら買って帰れるように頑張った。



またくしゃみ。これが、貴女が私の噂でもしてくれているからだったらいいのに。今日、貴女へのお土産を買って帰らなかった私への愚痴でいいから、私のことを、どこかでしてくれているのだったらいいのに。