この世は

静かな悲しみの日々。慟哭することはなくなったけれど、感情がたかぶらない分それだけ冷静に、胸にぽっかりと開いた穴が意識される。どうしようもない孤独感、貴女の不在を思い知らされる長い夜。


時々襲ってくる、貴女が居ないことの現実感のなさ。それが日増しに大きくなっていく。貴女が居ないことが日常になればなるだけ、貴女が目の前に居ないことが決して解けない謎として頭を混乱させる。

貴女が居なくなってから始めた、毎日ちょっとずつの腹筋、背筋、腕立て、スクワット。やり始めるたんびに貴女のことが頭によぎる。柔軟体操も始めたよ。前屈でくるぶしまで届かなかった指が、今では床に届くんよ。

貴女は身体が柔らかかった。「まま、見てー」とぺたりと手のひらが地面に届く様を見せつける。貴女ほどじゃないけれど、私も柔らかくなったんよ。見たら驚いてくれるはずなのに、私の方が柔らかいよと対抗してくれるはずなのに、なんの手応えもなく部屋の中は静かなまんま。

80キロ前後あった体重も、今は10数キロ痩せた。ぽっこりと出ていた、貴女のお気に入りの私のお腹は今やストンと見る影もない。少し痩せたかな、なんて言ったらいつも「痩せないでー」とお腹をぷにぷに掴んでた。顔の肉も落ちて、洗面台で見ると頬に影もでき、貧相な顔がより惨めになった。


この世は天国でも地獄でもない。貴女が居ないから、この世は所詮この世。ここじゃないどこか、貴女の居るどこかへ、私も行きたい。貴女と手を取り合い、抱きしめ、笑い合いたい。

笑っても一人、泣いても一人、この世はもう以前のようには輝いてはくれない。