看病

去年の12月11日のライブのチケットが2枚ある。岡村靖幸、使われなかったチケット。

去年の少し前から今頃、貴女はインフルエンザにかかった。予防注射してたのに。救急車を呼んで、病院に向かう貴女から電話があった。すぐに仕事を切り上げ、駅から貴女の居る病院に駆けつけた。

インフルエンザで、楽しみにしていた初めての岡村靖幸のライブに貴女は行けなかった。

「ママだけ行けばいいよ」

そう言ってくれたけど、私もライブ前日ぐらいから熱っぽく、しょうがないのでチケットをオークションに出し、受け取りを駅近くに設定した。けど、当日どんどん熱が上がり外に出るどころか、歩くのさえ辛くなり、オークションを取り消した。

風邪だった。


その時、私は貴女に辛く当たってしまった。風邪で寝込む私、けれど貴女も隣の部屋でインフルエンザで寝込んでいる。

「優しくしてくれない」

「看病してくれない」

貴女は涙を流した。私は 俺も風邪やねんからしゃーないやろ! と朦朧としながら隣の部屋に向かって怒鳴る。お互い弱っていた。しかし、怒鳴る必要はなかった。私の、病気で弱った身体以上に弱い、私の性質たる心が私を怒鳴らせたのだ。


去年は風邪だったが、以前も貴女がインフルエンザにかかった記憶が数度がある。これは貴女から始まり、私に伝染った。今年はまだインフルエンザにも風邪にも罹らない。


辛い、辛いインフルエンザだけれど、貴女から伝染ったということに懐かしさを覚える。もう、私に伝染してくれる人は居ない。看病する人も居ない。


貴女は病気に罹って、私に看病されることを喜んだ。仕事の帰りに、プッチンプリンやゼリーを買ってくるととても喜んだ。熱を測ってあげたり、おでこに手を当てられたりするのを、無性に求めた。布団にくるまる貴女のそばに座り、頭を撫でると、貴女は無邪気な笑顔を見せた。

私はもっと、貴女を手厚く看病できたはずだった。もっと優しく、もっと思い遣り深く、貴女に接することができた。しかし私は、自分に許されたその権利を目一杯使うことはできなかった。


私は貴女を看病したい。

優しく、手厚く、病気の辛さを忘れるくらい。

けれど、最期に貴女は私の看病を求めるまでもなく、一人病気にけりをつけた。

私の看病を望めないから?

私が優しくなかったから?

私が、何もしてやれなかったから?


貴女は一人、病気と闘い。

私は傍観してしまっていた。

2人で闘おうとはしていなかった。


今更何を言っても、仕様がない。


だけれど、ほんとに。

ごめんなさい。


ごめんなさい。