好きなもの

私の好きなこと、貴女の好きなこと、それぞれの生活の中で培ったこと。


貴女の好きなもの。フォレスト・ガンプ、羊たちの沈黙、アルプスの少女ハイジ。尾崎豊、マリリン・マンソン、DOUBLE、モーニング娘。マカロニほうれん荘、ブラックジャック、おやすみプンプン。

尾崎豊だけは、貴女のいるうちに好きだとは言えなかった。貴女が居なくなってから、iPodに全曲入れて強制的に聴くようになり、今では好きになったんよ。どうして貴女のいるうちに、好きだと言えなかったろう。


私の好きなもの。トラインスポッティング、ドグラ・マグラ。映画では、私発信でケーブル・ガイやマン・オン・ザ・ムーンを大好きになった貴女。

たま、ビートルズ、中村一義、モリッシー。貴女は中村一義をとても褒めていた。音楽好きにも、あまり音楽をきかない人にも、好かれる曲を作る人だと。私の目指すところだとも言った。目指す前に貴女は逝った。倉橋ヨエコやタテタカコは、歌い方が嫌いだと一蹴された。ミドリカワ書房は歌詞が気に入らないと一蹴。その一緒のされ方が気に喰わず、私は何度も貴女に抗議した。嫌いなら私は早々にそれらと決別すれば良かったのに。

マスターキートン、つげ義春、真崎・守、私の好きな漫画を貴女に見せる機会は結局なかった。早く見せていれば良かった。どんな感想が返ってきたろうか。

集中が続きにくい貴女は私の好きな本を読むことはなかった。読めば何か変わっていたろうか。


貴女の好きな本に マチルダは小さな大天才 があった。幼い天才マチルダが、詐欺を行う卑劣な父と愛情の薄い母の元に居ながら純真な心を保ち、専制的な校長のいる学校へ入学しながらも親身になる心の綺麗な教師の元で、校長をやっつける。貴女はマチルダに自分を重ねたのだろうか。去年、貴女は私に枕元でマチルダを読んでくれるよう私にねだった。疲れていない日には少しずつ、布団にくるまる貴女の隣で読み聞かせた。貴女はそれを楽しみにしてくれた。けれど、最後まで進んでいないのに、貴女は逝った。最後までしっかり読み進みてあげたかった。貴女は、本当に、私に ママ を求めていたんだろう。

慈悲深く、根拠のない、無私な愛を、求めていたんだろう。


ごめんなさい。

私にはそれを与えることができなかった。

私には無私の愛を表すことができなかった。

貴女は物足りなく想ったろう。


後悔だけが積もりゆく。

貴女の好きなことを全部好きになれたら良かったのに。私の全てを貴女に重ねることができれば良かったのに。無駄なプライドと、無意味な知識が私を頑なにした。私の大好きな貴女だったのだもの。その貴女が好きな物々を、どうして同じく愛せなかったろう。

どうして自分を捨て去ることができなかったのだろう。


私はどうして、明日も一人で生きていこうとするんだろう。