時間が余るとろくなもんじゃない

貴女の書いた落書き、リビングと貴女の部屋の間の戸に私が貼った貴女の落書き。


貴女は絵を描くのが好きだった。文字を書くのも好きだった。B5のメモ帳。いつも手元に置いて、落書きしたり、買い物メモを書いたり。

100均で落書き帳もよく買った。貴女はそれを何冊も何冊も終わらせて。私は何冊も何冊も買ってきて。


クリアファイルもよく買った。貴女がファッション誌から、お気に入りのページを切り取ってファイルに納めていく。気に入ったところを残すだけでなく、ページの構成も考えて、そのクリアファイルが一つの作品になるよう考え考えて納めていった。一つできると、私に一緒に見てくれと持ってきた。

去年は、もう考える元気もなかったのか、切り取ったページはただただ貯められるだけで、新しく買ってきたクリアファイルが使われることはなかった。


番組の編集も好きだった。録画した番組のCM切りはもちろん、面白いほんの数十秒だけを残して何度も私に見せた。2時間番組がほんの10秒に。まだ見てなかったのに と言うと、「面白いのここだけやから」と悪びれもせず、むしろ良いことをしたと満足の顔。


貴女と言葉を交わしたい。

褒められたそうな顔をした貴女を思う存分褒めてやりたい。

「えらい?」貴女はよく私に尋ねた。

えらいよ というと、子どもみたいに無邪気に笑う。頭を撫でると身体全体で喜びを表す。撫で終わると、私の腕を取り自分の頭へ再度導く。私は貴女の気がすむまで、いつまでも頭を撫で続ける。


愛しい貴女、私の可愛い娘。

私の師であり、私の子。

私は、恋人と親友と、先生と子どもを一度に失った。


必至でその穴を埋めようと、数ヶ月もの間卑劣と言われようとも手段を選ばずとち狂ってきた。けど、どれも穴を埋めることなんかできず。私の放り込む砂は、底まで届かぬ内に穴の熱さで蒸発してしまう。

滾るマグマが露出したまま。その熱さから逃れようと投げ込む砂、石、そしてゴミ。全てその熱さで、一区画も埋められないまま消え失せてしまう。いっそ私自身を投げ込んでみればカタがつくのかも知れないけれど、私の穴に私自身が飛び込むことはできない。

この熱いものを、溢れないよう、溢れないよう、不自然な格好で毎日歩く。溢れた途端、その熱さで人を傷つけるかもしれない。


明日からも私は、埋められない穴を傾けないよう、細心の注意でもって歩かなければならない。誰かに身体を支えて欲しい。穴を埋めてくれなくていい。

私の不恰好な姿を、不自然な姿勢を、誰か支えて欲しい。