歩く

貴女への向かうことなく胸の内に滞っていた愛情が、堰を切ったように流れ出す。一度に、全部。向かうべき対象を喪っていたそれは、止めどもなく、制御もならず。

その恋は、私の悪魔のような四面方位の愛のせいでどうやら実らずに枯れてしまいそう。水浸しになった種は芽生えずに水底に。


ただ、こう言ってはなんだけれど、心の膿が一時に放出してしまったような一種の爽快感はある。とても、素晴らしい感覚だった。また私も人を好きになれるんだ、と。ほんの短い間だったけれど、一年を過ぎて。調子が良すぎるのかな。

やっぱり反動はあったけどね。

貴女を救えなかった私が、何をしてんねん、何を浮かれようとしてんねん。貴女が疎外されてると感じてたこのクソッタレな世界に蹴りをいれてやることすら出来ず、また私が世界に対して貴女の前に立っていると貴女に感じさせてあげることも出来ず。呆れるほどの脳天気。


一度に空っぽになった愛情を、また溜めていく。行き場のない愛情を、ゆっくりゆっくり蒸留している。



最近、休みの日に外に出られるようになったよ。左腕に感じるはずの貴女の温もりがないのはまだまだ慣れないけれど。歩いていて、ふと左を振り向いても、誰もそこには居ないけれど。私は一人歩いているよ。


時々、こんな夜には貴女に会いに行ってもいいか、なんて思ったりもするけれど。それでも私は今日、外で一人歩いているよ。


見守ってくれなんて、貴女は面倒がってそっぽ向くかも知れないけれど。たまには俺のこと見て、「ママ、バカ」なんて指差して笑ってほしい。これからも、私は歩かねばならないのだから。