留守を過ごす

貴女がただ留守をしているだけのような気がする。


ディズニーリゾートへ遊びに行って。行きつけの店に飲みに行って。帰りが遅くなっているだけ。しばらくすれば貴女が帰って来るような気がする。それとも終電を逃して、朝帰ってくるのかしら。朝方、私が出掛ける直前に顔に満面の笑みでもってチャイムを押す貴女。冷たく冷えた貴女の身体をぎゅっと抱きしめる。冷たく、ぴんと張った貴女の頬に何度も唇をあてる。貴女は「楽しかったー」とあった出来事を話す。

寝巻きに着替える間も、楽しかった時間を全て私に共有させようとするかのように、私と過ごさなかった貴女の時間を私に話し続ける。夜気に触れて湿気を帯びた貴女の髪を、着替えている間も私は撫でる。この手からこぼれ落とさないように、この手から逃さないように。


これから貴女は留守を続ける。帰ってくることはない。貴女の過ごした時間を私の耳に入れることはできない。貴女の冷えた身体を、風呂上がりで火照った私の身体で抱きしめることができない。貴女の頬に、額に、私の唇が届くことはもう、ない。


だけれど、いま貴女が留守をしているだけのような、そんな気がする。


私は貴女の居ないこの部屋で、貴女の帰りを待ち続ける。